守り狐を視る人文 乃
山あいのお社の家で、
人に付いている狐を視ています。
ここには、私の暮らしと
務めのことを書いています。
はじめまして
はじめまして、文乃と申します。
山あいの小さな集落で、家の敷地にあるお社にお稲荷さまを祀り、そのお使いの狐さまの声を取り次いできた家に生まれました。私で七代目になります。
母の代から、集落を出た人やその知り合いには、手紙で視てきました。今はそれを、LINEで受けています。
鑑定のことだけでなく、どんな家で、どんなふうに暮らしている者なのかも知っていただけたらと思い、このページを作りました。お時間のある時に、ゆっくり読んでいただけたらうれしいです。

お社と狐さまのこと
家の敷地の隅に、小さなお社があります。代々お稲荷さまを祀ってきたお社です。
そのお使いの狐さまは、七代の誰にも、一度も姿を見せたことがありません。けれど、この家の者にだけは声を届け、人に付いている狐の姿を視せてくださいます。

家に伝わる話では、およそ二百年前、初代の娘が山で、傷ついた一匹の狐を助けたそうです。
その夜、娘の夢の中で、姿の見えない声がこう告げました。
人には、それぞれに狐が付いている。それを人に伝えてほしい。そのかわり、お前の家を代々守ろう。
娘は敷地にお社を建て、お稲荷さまを祀りました。その約束は、七代たった今も守られていると、私は思っています。
守り狐と七つ尾
人が生まれると、お稲荷さまが守りの狐を一匹ずつ付けてくださいます。家では「守り狐」と呼んできました。狐は、その人が気づいてくれるのを、ずっとそばで待っています。
狐の色は五つあり、その人が生まれ持った性質に合う色の狐が付きます。色は一生変わりません。どの色が良い、悪いということもありません。
清らかで、まっすぐ。迷いを晴らし、正しい道へ導くのが得意な狐です。
明るく、人を惹きつける。お金や仕事、人が集まる流れを守ります。
静かで、勘が鋭い。直感や決断を助け、見えない危険を避けさせます。
情が深く、人のために動く。恋愛やご縁、人とのつながりを守ります。
芯が強く、我慢強い。厄を払い、悪い縁を断つ、強い守りの狐です。
ご自分の狐が何色かは、視てみないと分かりません。誕生日や星座で決まるものではないのです。
守り狐には、誰にでも七本の尾があり、一本ずつ受け持っているものがあります。
物事がうまく回っている時は、尾が開いています。我慢を重ねたり、自分を後回しにしたりしていると、狐はその尾をたたんで、あなたを守ろうとします。大きな別れのあとにも、狐はしばらく尾をたたみます。
ですから、たたんだ尾は、あなたのせいではありません。我慢してきた分だけ、狐が守ってくれていた印です。
狐にもそれぞれ性格があります。照れ屋の狐、世話焼きの狐、頑固な狐、甘えん坊の狐、のんびりした狐。持ち主と似ていることもあれば、まるで違うこともあって、視ていて飽きません。
私の狐のこと
私に付いているのは、銀狐です。静かで、勘が鋭い狐です。私も昔から口数が少なく、そのかわり、人の顔色の変わるのには、誰より先に気づく子どもでした。
気性は、照れ屋です。LINEで鑑定を受けるようになった頃、しばらく顔を出してくれませんでした。呼んでも、尾の先がちらりと見えるだけ。慣れないことを始めた私を、離れたところから見ていたのだと思います。
母を見送ったあと、私の狐は、家族の尾をしばらくたたんでいました。ある朝、鈴を鳴らした時に、ふと気づくと、また開いていました。今は七本とも開いています。
たたんでいた間、狐はちゃんと、私が立ち直るのを待っていてくれたのだと思います。鑑定で「尾をたたんでいるのは、あなたのせいではありません」とお伝えするのは、自分でそれを知っているからです。
母から継いだもの
子どもの頃、ひとりで泣いていると、いつも何かがそばに来て、丸くなっている気がしました。振り向いても誰もいないのに、温かかったのを覚えています。
少し大きくなると、機嫌の悪い人の後ろで、何かが耳を伏せているのが視えるようになりました。母に話すと「それは、その人の狐だよ」と教えてくれました。
家には、代々書き継いできた帳面があります。視せていただいた言葉、集落の出来事、季節の移り変わり。七代分が、少しずつ違う字で残っています。母の字は細くて、右に少し傾いています。
代々使い継いできた鈴があります。朝と夕方、それから鑑定の前に鳴らして、狐さまをお呼びします。母の手から私の手に移った時、思っていたより重くて驚きました。

務めを継いで間もない頃、視えたことを、そのまま全部お伝えしてしまったことがあります。その方は、何も言わずに帰っていかれました。
その夜、母に言われました。
視えたことを全部言うのが務めじゃない。その人が受け取れる言葉にして渡しなさい。
今も、鑑定のお返事を書くたびに、この言葉を思い出します。
一日の務め
夜が明けたら、お社にお米を供え、鈴を鳴らします。一日はここから始まります。
家のことと、田んぼの世話。集落の方から相談を受けることもあります。
もう一度、鈴を鳴らして、一日のお礼をします。
届いたご相談を、一つずつ読みます。鈴を鳴らしてから視せていただき、帳面に書き留めて、お返事を書きます。

私のこと
夜が明ける前の、お社の前です。音がなくて、空気が冷たくて、狐さまの声がいちばんよく届く気がします。
新米の頃です。お稲荷さまは、もとは稲の神さま。その年の新米をお社に供える朝は、何度迎えても背筋が伸びます。
母の代の帳面です。読み返すと、母も同じところで迷っていたのが分かって、少し安心します。
人の多いところと、大きな音です。それから、スマートフォンで文字を打つこと。鑑定のお返事は、まず帳面に書いてから打っているので、どうしても時間がかかります。
帳面から

十月
新米をお社に供えました。七代分の帳面をめくると、どの代も、この日のことだけは少し長めに書いています。
九月
鑑定をお届けした方から、お返事をいただきました。たたんでいた仕事の尾が、少し開いてきたようです。私が何かしたのではなく、その方の毎日が変わったのだと思います。
八月
お盆に、母の帳面を読み返しました。同じ八月に、母も「言葉が見つからない」と書いていて、少し笑ってしまいました。
七月
夕立のあと、私の狐が、めずらしく尾の先まで見せてくれました。照れ屋なので、こういう日は書いておきます。
鑑定で大切にしていること
狐が視せてくれたままを、はっきりお伝えします。
たたんだ尾は、脅しの材料ではありません。狐があなたを守ってきた印です。
視えたことを全部は言いません。今のあなたが受け取れる形にして、お届けします。
狐は守ってくれます。でも、尾を開くのは、あなたの毎日です。その手伝いが少しでもできればと思っています。
文乃